
2003年10月に九州芸術工科大学と九州大学が統合したことにより、九州大学芸術工学部、大学院芸術工学府が誕生しました。それから5年が経過する中で、芸術工学府においてはデザインストラテジー専攻を新設し、また芸術工学専攻も4つのコースに再編するなど、21世紀の芸術工学教育・研究に対応する環境の整備につとめてまいりました。
芸術工学部、芸術工学府が理念に掲げる「技術の人間化」は、高度経済成長により生活者の環境が著しく悪化したことを契機とし、その内省から1968年に生まれたものです。倫理性を甚だ欠く当時の経済活動は、多様な公害を引き起こしますが、常にその対策は徹底せず、現在も生活者を取り巻く環境には数多くの問題が山積しています。つまり、技術の人間化という理念は、40年経って風化したというより、益々必要性が高まっているのです。
芸術工学は、技術の人間化を具現化するための学問分野で、高次のデザイナーを育成することを目標としています。学際的で、文理融合型の教育・研究プログラムは、予想以上に幅広い内容です。人間の生理、心理、行動、芸術的な感性等といった基礎的な学力を養成し、最終的には、デザインの提案をプレゼンテーションする力を身につけるカリキュラムを設定しています。当然そのカリキュラムには、倫理を重視した内容も含まれています。生活者守護という精神なくして芸術工学は成り立ちません。
芸術工学研究院では、現在、科学振興調整費人材育成プログラム「先導的デジタルコンテンツ創成支援ユニット」「ホールマネジメントエンジニア育成ユニット」が採択され、新たな人材育成に取り組んでいます。また、東京ミッドタウン内に設置した芸術工学東京サイトを中心に、研究成果の発表、産学連携に力を発揮しています。
近年、グローバル化による経済活動が、各方面から注目されています。貿易の自由化は、経済活動の競争を煽り、力の強い先進国家、先端企業が優位に立つという仕組みに日本も巻き込まれています。こうした社会情勢の中で、競争力を持つことが大切であることは周知の事実でありますが、一方グローバル化によって大きな打撃を被る人達も世界中にいます。このグローバル化の功罪に対して、どのように立ち向かっていくかが、21世紀の芸術工学にとって大きな課題です。若い感性と情熱を持った皆さんとチャレンジできることを楽しみにしています。

